犬の去勢について

犬の去勢についてのお話です。

オス犬を飼い始めたら、混合ワクチン、狂犬病ワクチン、フィラリア予防、ノミ予防と各種予防をしていきますが、それと同様に考えなければいけないのは、去勢をするかどうかです。

最近は、いろいろな情報がインターネットを介して手軽に入手できますので、逆に迷ってしまったりするかもしれません。不確かな情報や、偏った情報(情報発信者の信念に基づいた非科学的な情報など)もありますので、注意していただき、できるだけ正確な情報をもとに決めていただければと思います。

去勢手術の目的(メリットとも言えます)ですが、主に2つです。

1.病気の予防

男性ホルモン由来の疾患を予防できます。以下に、予防できる疾患を挙げていきます。

前立腺肥大症…膀胱の後ろがわにある前立腺という副生殖腺が大きくなってきます。加齢とともにほとんどの犬がなるといわれていますが、肥大がひどくなると排尿障害や、排便障害を起こす子もいます。もちろん肥大の程度によるので肥大があっても症状が出ない子も多いです。

また、前立腺に小さい液体のたまった穴(嚢胞)ができる場合もあります。それが、血尿の原因になったり、化膿すると、膿瘍になり全身に感染が及ぶこともあります。

肛門周囲腺腫…肛門周囲に良性の腫瘍ができます。腫瘍自体は良性なのですが場所が場所だけにうんちがしづらくなったり、こすりつけて出血することもあります。あまり大きくなると手術もしづらくなってしまいます。

会陰ヘルニア…お尻の筋肉が薄くなり、そこから直腸がはみでて排便困難になる病気です。うんちがしたいけど出せないという状況になることもあります。また、治療は手術になりますが、再発の多い病気でもありますので、手術を繰り返してしまう子もいます。

精巣腫瘍…精巣の腫瘍は三つありますが、その中でもセルトリ細胞腫という腫瘍は大変悪性度が高く、骨髄(血をつくるところ)の働きを止めてしまいます(骨髄抑制)。一度、そうなると手術をしても助かりません。潜在精巣(精巣が陰嚢まで降りてきていない)の子は特になりやすいです。去勢手術をしてしまえば、精巣自体なくなりますのでなることはありません。

2.発情に伴う問題の軽減

女の子の発情に対して反応してしまうことへの、本人のストレスの軽減や、発情行動(マーキングや腰ふりなど)の抑制になります。

しかし、すでにマーキングが習慣として固定されている場合は、去勢手術をしても治らないことがあります。

以上が主な目的です。続いて、デメリットです。

1.全身麻酔のリスク

手術をするにあたっては、全身麻酔をかけなければいけません。そのリスクは伴いますが、若くて健康な子であれば、リスクはかなり低いものになります。当然、麻酔に際して、事前の診察、検査や、モニター(心電図等)をしながら慎重に行います。

ただ、前述の病気がすべて高齢になってから起こり、治療が手術主体ということを考えると麻酔をかけるなら若い元気なうちにという考えもあります。

2.肥満になりやすい

どうしても、去勢した子は太りやすくなりますが、食事などでコントロールできますし、去勢した子用のフードもあります。デメリットとしてはそれほど大きくないのかもしれません。

これらのことも、ふまえながらご家族で話し合っていただき、決めてください。

去勢手術はとくにいつまでにやらなければいけないというものはありませんので、若いころしそびれたけど、やっぱりしておきたいという場合でも手術は可能です。

他にも、心情的な部分で抵抗があったりすることも多いようですが、それも重要な要素ですので総合的に判断いただければと思います。

不明な点がございましたら、いつでもご相談ください。

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