犬の避妊手術について

犬の避妊手術についてです。

避妊手術とは

避妊手術とは、雌犬の卵巣もしくは卵巣と子宮の両方を摘出する手術です。これを行うことで、発情や妊娠をすることがなくなり、いくつかの重要な生殖器疾患を予防することができます。
おうちの子にとって重要な問題ですので、メリットとデメリットを比較し、ご家族で十分にお話し合いをして決めてください。

避妊手術のメリット

避妊手術によって得られるメリットは、乳腺腫瘍や避妊手術を主とした生殖器系の病気の予防、そして発情に伴うストレスの軽減です。

①病気の予防(避妊によって予防できる2つの病気)

避妊手術をすることによって予防できる代表的な病気は次の2つです。2つとも高齢のワンちゃんでは、発生率がかなり高い病気です。

・乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は乳腺と呼ばれる乳汁を分泌する腺にしこりができる病気です。良性と悪性の割合はおおむね50%ずつです

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犬の乳頭(黄色)は左右5個ずつ。その間に乳腺(赤線)があり、ライン上にしこりができる。

良性の腫瘍の場合、転移することはありませんが、多発したり、大きくなることで身体に負担をかけることがあります。特に大きくなりすぎると、内側が壊死してしまい、腫瘍自体が裂けて膿んできます。こうなると、ワンちゃん本人だけでなく、ご家族の生活の質も下げてしまいます。
また、悪性では、肺に転移することで、呼吸困難を起こすなど命をおびやかします。非常に悪性度の強い腫瘍では、進行はかなり早く、治療は外科手術ですが、肺に転移してしまうと手術はできません。

避妊手術を行うと乳腺腫瘍を予防できる可能性がかなり高まりますが、手術を行う時期によって予防率が変わってきます。
一回目の発情の前までに手術をすると、97%以上の予防率と言われています。2回目の発情までに行っても90%以上予防できるとされています。3回目の発情までに行った場合は70%ほどとなり、それ以降は、あまり予防効果を得られにくいと言われています。
そのため、乳腺腫瘍の予防効果を得るためには、2回目の発情の前までに手術を行うのが良いでしょう。

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↑乳腺腫瘍の術後の傷。犬の乳頭は左右5個ずつあり、乳腺も長いため広範囲に切除する事が多い。

・子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮が細菌感染(主に大腸菌)し、子宮内部に膿がたまる病気です。子宮に膿がたまる時期(黄体期)は免疫力が落ちており、無治療の状態が続くと、細菌が身体中を巡って悪さをする状態(敗血症)になったり、膿がたまった子宮が破れて腹膜炎を起こし、命を落としてしまう恐ろしい病気です。
子宮は薬剤が届きづらく、内科療法(お薬による治療)の効果が出にくいので、治療の第一選択は手術で感染した子宮を摘出することです。しかし、病気で体力が弱っている上、病気になる子は高齢のことが多いため手術自体のリスクも高くなります。

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子宮蓄膿症の子宮。子宮内に膿が溜まって、ボコボコと腫れている。

避妊手術をしてしまえば、子宮蓄膿症にかかることはありません。行う時期も特に限定はありません。

以上が、避妊によって予防できる主な病気です。

②発情によるストレスの軽減

犬の発情は、おおむね半年に一度くらい来ます。基本的に一生涯、発情はあります。年をとったからといって発情がなくなることはありません。
人間社会で暮らす上で、発情に伴う行動などがうまく折り合わないことがあります。避妊手術をすることで発情が起こらなくなればそれらが防げる可能性があります。具体的には、以下のことがらが挙げられます。

・偽妊娠の予防

犬の妊娠期間は約2ヶ月です。犬は妊娠していなくても、発情後2ヶ月間は妊娠中と同じホルモンの働きがあります。このため、あたかも妊娠しているかのような 行動を取ることがあります。これを偽妊娠といいます。
人形を自分の周りに配置して子育てをしているようにふるまったり、暗がりを好んだり、性格が変わる(神経質になる)こともあります。避妊をすることでこれらをなくすことができます。

・発情出血がなくなる

発情期には、外陰部から出血を伴います。カーペットを汚してしまったり、おむつをつけることでかぶれて皮膚炎になる子もいます。自然界なら問題ないのでしょうが、人間と暮らしていく以上、決して無視できない問題となります。避妊をすると発情が来なくなるので、このことに関して頭を悩ます必要はなくなります。

その他、ドッグラン等、不特定多数の犬が集まる施設に行くのに制限がなくなる、望まない妊娠がなくなるなどのメリットが避妊手術をすることで得られます。

避妊手術を行う上でのリスクやデメリット

避妊手術を行う上でリスクや手術によるデメリットもあります。避妊手術を行うかどうかの判断をする参考にしてください。

・全身麻酔のリスク

全身麻酔は安全に手術を行うために必要です。しかし、ごくまれに麻酔によって状態が悪化する場合や命に関わる場合があります。若い元気な犬では、確率は非常に低いのですが、どんなに麻酔薬や麻酔法が発展してもゼロにはなりません。
ただ、上に挙げた病気(乳腺腫瘍、子宮蓄膿症)に関しては、手術が治療法になりますので病気になった状態で高齢での手術をするという状況になるよりは、元気な状態で若いうちに手術をする方が良いのではないかという考え方もあります。

・肥満になりやすい

避妊をした子は肥満になりやすい傾向にあります。これは、代謝が変わるためと言われています。この点に関してましては、フードの量の調節や、避妊後用のフードに切り替えるなどで十分にコントロールできます。

・尿失禁

避妊をした子とそうでない子を比べると、尿失禁を起こす様になる割合が多いという報告があります。術後数ヶ月〜数年後に起こります。原因ははっきりとは、わかっておりませんがホルモンの関連などの指摘があります。発生率は非常に低くめったにおこりませんが、注意が必要です。
その他、まれに縫合糸に反応してしこり(腫瘍)を形成してしまうこともあります。(縫合糸反応性肉芽種)

このようにメリットとデメリットをよく理解した上で検討していただき、総合的に判断していただくと良いでしょう。

ワンちゃんとご家族にとって、一番いい選択ができるよう願っております。

ご不明な点がございましたらお問い合わせください。

大阪府茨木市もみじ動物病院